AMIT(Art, Media and I, Tokyo)。「AMI(仏語で「友だち」)」という言葉を含むささやかなこのメディアアート・フェスティバルは、東京の都市空間でアートとメディアと「I(私、各人)」が出会い、親しくつながっていく祝祭的な4日間です。2回目を迎える今年のテーマは「メディア・ポイエーシス」、ギリシャ語で「生産」や「製作」を意味する「ポイエーシス」と「メディア」をつなげた造語です。
AMIT2015は東京国際フォーラム(アートフェア東京会場)、東京駅前の丸ビルやOAZO、そしてこれらをつなぐ丸の内エリアで展開いたします。アートフェア東京の会期中、新旧メディアの可能性をしなやかに探求する注目のメディアアーティストの作品が、街なかに出現します。
また、同時にAMIT2015出品アーティストに加え、活性化する東京のメディアアート・シーンのキーパーソンにお話しをうかがうシンポジウムを開催します。アート&テクノロジーに彩られるこの時期の東京でアートとメディアと都市を考える機会を創出します。
街をめぐり、これまでにないメディアの胎動を感じてください。AMIT2015によって生まれる「メディア・ポイエーシス」は、あなた、そして皆さんの参加によって育ち、街全体に広がっていくことでしょう。
自動的に編み物が作られる自作のマシンをマルキューブで稼働させ、会場内そして丸の内エリアの屋内外でさまざまなものを編みくるむプロジェクト。カフェの中、街なかの樹木や看板、空間の一角…。ソフトで温かみのあるニットがささやかな「インベーダー」となって、街のいたるところをカラフルに変容させている。いつもと違って見える街では、人と街、人と人がこれまでにないコミュニケーションを紡ぎ始める。毛糸という身近な素材が世界のあらゆるものを包みうるポテンシャルをもつことを見抜き活動してきた力石の、都市空間での初の大規模な実現となる。ぜひ街を巡ってみてください。
1982年生まれ。2004年多摩美術大学美術学部情報デザイン学科卒業。ハイパーニットクリエイター。編み物をコミュニケーションメディアとして、街や空間に仕掛けるインスタレーションやプロジェクトを展開。温かみのあるカラフルな毛糸が街の風景を新鮮なものに変え、人と人、人と土地、空間と現実などさまざまなものに新しい関係を生み出していく。その活動自体が「世界をゆるやかにつないでいく作業であり、壮大なインスタレーションの一端」(力石)となっている。2014年 LUMINE meets ART AWARD グランプリ受賞
ヒューマンサイズの巨大シンセサイザー。映画「2001年宇宙の旅」のモノリスをイメージした抽象的でソリッドな存在感を放ちながら、子どもから大人まで、訪れた人々が操作しインタラクションを楽しめるものとなっている。4つのサウンド・セットを内蔵したステップ・シーケンサー・ドラムマシン、キーボード、アルペジエイター、X-Y エフェクターなどの機能を搭載、音色やリズムを作って気軽に音楽を作ることができるとともに、シンセのメカニズムを体感的に理解することができる。昨年11月Red Bull Music Academy* 東京開催に際して渋谷で2日間公開、今回のために「自動演奏モード」の追加などシステムや形状がアップグレードされた。
*若く才能溢れるアーティストたちを支援する世界的な音楽学校
2006年に設立。Webから空間におけるインタラクティブ・デザインまで、幅広いメディアをカバーする高い技術力と表現力を併せ持った少数精鋭のクリエイター集団。建築、メディアアート、音楽など、さまざまなバックグラウンドを持つ個性豊かなクリエイターたちが、デザイン/アート/エンタテインメントの枠組みを行き来しながら行う実験には、既存メディアとは異なる新たなフォーマットが生み出される可能性に溢れている。アルス・エレクトロニカ、文化庁メディア芸術祭、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルなど受賞歴多数。
6台のオープンリール式テープレコーダーそれぞれのテープの端にバルーンを取り付けたサウンド・インスタレーション。テープが巻き出される過程で音の出力とともにバルーンが上昇、6つの音(テープのコンテンツ)が空間全体でひとつの音響として立ち昇る壮観な没入性と、巻き戻し音とともに風船が急降下する軽快なノイズ(機材音)とが掛け合いながら、心地よいリズムを生み出している。本作は昨年9月にオーストリアの国際的な電子芸術フェスティバル、アルス・エレクトロニカで発表、展示はゴシックリバイバル様式の教会、聖マリア大聖堂で行われた。日本初展示となる今回は、50mの高さをもつ OAZO の吹き抜けのために音響を設計。上のフロアから見下ろすこともできる。
21:15 より作家による解説と操作による特別展示を行います。
通常展示(11:00~21:00)は近隣店舗への配慮のため音量を抑えています。また、作品が稼働するのは、毎正時~15分と、30分〜45分の2回となります。ご了承ください。
1987年生まれ。音楽家 / アーティスト。古い電化製品とコンピュータを組み合わせて音楽・美術作品の制作、パフォーマンスを行う。2009年よりオープンリール式テープレコーダーを操り演奏するグループ「Open Reel Ensemble」を結成、コンサートを始め、CD/DVDや書籍の出版、映画やファッションショーへの楽曲提供など多岐に渡る活動を行っている。近年では20台のオープンリールを用いた楽団によるコンサートも開催した。ブラウン管テレビを演奏するプロジェクト「Braun Tube Jazz Band」やインスタレーション作品「時折織成 –落下する記録-」が文化庁メディア芸術祭で受賞。各国でも公演や展示を展開している。
親しい人たちとプライベートなカメラロールを共有し、ビジュアル・コミュニケーションを楽しめる最新 iPhoneアプリ「Picsee」*。撮影してすぐに相手に写真が届けられ、お互いの視覚を共有するかのように親密な体験ができることが特徴です。このアプリを3人のアーティストが日常的にプライベートで使っている様子を、AMIT2015会期中に特別展示という形で公開します。
ユニークな世界観をもつ3人が、Picsee を通して写真を瞬時に共有するプロセスの中で、視覚的なインスピレーションの連鎖が生まれつづけています。テーブル上では、会期中に3人が Picsee で撮影する写真が、リアルタイムで各人専用のプリンタから出力されていきます**。どうぞ写真を手にとって頂いて、本来は3人のスマホのなかに閉じられているプライベートな視覚コミュニケーションの気配を感じ取ってみてください。
* Picsee: iPhone の AppStore で検索、無料ダウンロードできます。** App Store で配信されている通常の Picsee アプリにはない、AMIT2015 展示だけの特別仕様です。また、通常の Picsee アプリでは写真にコメントや ♥ がつけられますが、今回の展示では写真のみを印刷しています。
インスタレーション協力:Yuki Yoshioka(BCL)Picseeアプリ+特別展示システム提供:ドミニク・チェン(株式会社ディヴィデュアル)
ユーザー・インターフェイス・デザイナー。ドイツで育ち、ロンドンと東京で暮らしたのち2009年よりサンフランシスコを拠点とする。人々とテクノロジーのインタラクション可能性を探求。これまでSony、YouTube、Googleなどの企業のインターフェイスやサービスをデザイン、2003年より携帯電話で写真をウェブに投稿している。
2003年にゲオアグ・トレメルとアーティスティック・リサーチ・フレームワークBCLを立ち上げ、主にバイオテクノロジーの発展や水問題による社会へのインパクトと、私たちの意識が自然、社会、文化それぞれの環境においていかに映し出されているのかを探索する活動を科学、アート、デザインの領域を超えて展開している。
写真家。ドイツ出身、1993年からロンドンを拠点にファッション・音楽業界、グローバルブランドの広告等の撮影を手がける。1999年以降、自身のプロジェクトやコマーシャルワークを欧州や日本で展示。2007年より東京を拠点にポートレートや建築、都市風景にフォーカスしたプロジェクトを継続中。
Yoshiteru Himuro、Setsuya Kurotaki、DJ UPPERCUT らのアーティストが Human Sized Synthesizer を使用してフリースタイルのライブセッションを行います。アーティストとオーディエンスがセッションできるチャンスも。その場限りのコラボレーションをぜひ生でお楽しみください。
卓越したビートアレンジと、繊細かつドラマティックなウワモノを組み合わせたトラックメイキングのセンスで、映像プロフェッショナル達から絶大な支持を得ている音楽家/サウンドデザイナー。自身の作品を国内外のレーベルから多数リリースする一方で、Sony、Ci3zen、資生堂、大塚製薬といったブランドのコマーシャルワークを数多く手がけ、その柔軟な感性と絵音のシンクロのセンスで、クリエイティブ関係者から高い評価を得ている。
ライゾマティクス所属のサウンドクリエイター/DJ 真鍋大度と黒瀧節也によるデュオ「Daito Manabe + SetsuyaKurotaki」としても活動。
Producer / DJ。1981年、東京府中市生まれ。幼少の頃にスケートボードを通じてヒップホップに出会う。その長年培われてきたプロダクションスキルは他のプロデューサーからも信頼が厚くこれまでに 故 JAY DEE(R.I.P. J-DILLA), TOWA TEI, MURO, HIFANA, 近藤等則 等の多岐に渡るコラボレーションを行い、近年では鎮座DOPENESSの1stを全曲リミックスしたアルバム“200% RAP” / 配信EP “T.U.B.E.”を発表。タイトル曲 "T.U.B.E."はゲーム『FIFA 14』のサウンドトラックにも選ばれ世界中にリリースされる。目下、多岐にわたるプロデュースワーク、CM音楽制作に邁進。鎮座DOPENESS & DOPING BANDとしてバンドにおいても活動中。
丸の内仲通りの並木をアーティストの力石咲さんと一緒に編みくるんでいきます。
アーティストの力石咲さんと一緒に、力石さんの作品であるニットスーツを着てマルキューブ内の植栽鉢を編みくるんでいきます。その後、丸の内エリアの力石さんの作品を作家のガイドで一緒に観て回ります。
※内容は変更になる場合があります。
日本は世界的に活躍するメディアアーティストを多数輩出するなど、テクノロジーとアートが密接に結び付いています。またアニメやゲームなど日本のエンタテインメント作品も海外で高い人気を誇っています。ファインアートからサブカルチャーまで、いわゆるメディアアートといわれる分野では、日本は世界的に見てもアドバンテージを保っています。東京のさまざまなエリアで開催されるメディアアート関連のイベント関係者とAMIT関係者が一堂に会し、テクノロジーとアートの未来と、東京における文化発信について考えるシンポジウムです。
AMIT2015参加アーティスト、新しいアートの動向を扱う若手のギャラリスト、丸の内エリアのブランディングを担う方々をパネリストとして招き、都市とアートの関わりについて、丸の内の未来について語ります。
ギャラリーwaitingroomオーナー・ディレクター。1978年横浜市生まれ。ニューヨーク大学スタジオアート学科卒業後、NYのArtists Spaceのスタッフとして若手アーティストのサポートを行う。その後AG Galleryのメインキュレーターとして展示企画に携わる傍ら、インディペンデントでもキュレーションを展開。2007 年に帰国しフリーランスの企画コーディネーターとして活動後、2010 年恵比寿にwaitingroom を設立、現代美術とメディアアートを横断するアーティストを意欲的に手がける。
三菱地所株式会社 街ブランド推進部副長。1968年生まれ。1991年、三菱地所(株)に入社。丸の内再開発計画、ニューヨーク駐在、ベンチャー支援事業などを経て、2012年より街ブランド企画部副長(当時)となり、現在まで丸の内のプロモーション、イベント、アート事業を担当している。
メディアアーティスト /デジタルクリエイター2006年にウェブからインタラクティブデザインまで幅広いメディアをカバーするデザインファーム「rhizomatiks」を立ち上げる。以降、ジャンルやフィールドを問わずプログラミングを駆使して様々なプロジェクトに参加。文化庁メディア芸術祭においては大賞2回。「Sound of Honda/ Ayrton Senna 1989」が2014年カンヌライオンズでチタニウム&インテグレーテッド部門にてグランプリを受賞など受賞歴多数。
メディアアート・キュレーター。多摩美術大学および東京造形大学客員教授、IAMAS(国際情報科学芸術アカデミー)非常勤講師。アツコバルー arts drinks talkアーティスティック・ディレクター、SIAF 2014(札幌国際芸術祭)アソシエイト・キュレーター。アートと科学を横断する数々の展覧会やプロジェクトを、インディペンデント(1990-現在)、キヤノン・アートラボ(1990-2001)、森美術館(2002-04)、NTT ICC(2004-10)をはじめ国内外で実現。2010年より「拡張されたキュレーティング」を提唱。
2月から3月にかけて、東京ではさまざまなメディアアート関連イベントが開催されます。東京でこの時期に開催される関連フェスティバル関係者が一堂に会し、東京のメディアアート・シーンについて、そして、東京の文化情報発信としてのメディアアートの未来について語り合います。
公益財団法人 CG-ARTS協会 イノベーション事業部長。1994年より同協会において、テクノロジーの進化による表現分野の文化振興活動や人材育成を行う。1996年に「文化庁メディア芸術祭」の構想段階から関わり、アートとマンガが並列するフェスティバルの仕組みづくりや、海外展の開催、国内外のネットワーク形成等の立ち上げを担った。他には「学生CGコンテスト」「ROBOT-ISM展」「日本の表現力展」「MEDIA AMBITION TOKYO」「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」の立ち上げや運営に関わる。
2010年末よりアンスティチュ・フランセ東京の文化プログラム主任を務め、ビジュアルアートを中心に、数々のイベントや討論会、講演会等を企画する。2012年より毎年2月に開催しているフェスティバル「デジタル・ショック」は、フランスのデジタル・カルチャーを紹介しながら、日本とフランスの芸術交流のプラットフォームとなることを目指している。
1965年生まれ。スペースコンポーザー。2002年、空間クリエイティブカンパニーJTQを設立。「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をテーマにイベント、エキジビション、インスタレーション、商空間開発等のクリエイティブ・ディレクションを行う。2013年、10年の活動をまとめた作品集「Junji Tanigawa, The Space Composer」(Page OnePublishing)を刊行、D & AD賞に入選。最近の仕事にIMA CONCEPT STORE (2014) など。2013年開始のMEDIA AMBITION TOKYOではアーティスティックディレクターを務める。
独立行政法人産業技術総合研究所主任研究員、ニコニコ学会β実行委員長、メディア・アーティスト。1997年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。2011年、ニコニコ学会βを立ち上げ、グッドデザイン賞、アルス・エレクトロニカ賞を受賞。主な著書に『パターン、Wiki、XP』『ニコニコ学会βを研究してみた』『進化するアカデミア』。産総研では「利用者参画によるサービスの構築・運用」をテーマに研究を続ける。
「AMIT」、アート、メディア、そして私、場所は東京。日常的な情報へのアクセスや既知や未知の人とのやりとり。呼吸するように自然で、時に意識されるさまざまな出来事。なじみの場所や人、未知の出会い、既知のものの再発見。実空間とサイバー空間、複数のリアリティを渡り、時に瞬時に時にはゆっくりと流れゆく時間をやりすごしながら私たちは生きている。
アートやメディアは、日常や都市において欠かせない。ソーシャルネットワークに代表される近年のメディア環境は、私たちのコミュニケーションやアイデンティティをより共有的なものとした。そしてとりわけ 3.11 後の状況は、異なる世界の見方や世界と能動的に関わることの意味を私たちに投げかけた。そこでは見えないものを感知・可視化していくアートの創造力がますます求められている。
20世紀を通して、アートは近代から現代への流れの中で表現を拡張してきた。デュシャンに顕著なように、アートの素材は100年前に日常へと拡張し、現在ではデジタルを含む世界のあらゆる情報がテーマや素材となりうる。ヨーゼフ・ボイスはかつて、「人は誰もがアーティストである」と唱えた。そこから出発し、生活とアートに新たにメディア、そしてメディア的なまなざしを加えることで、広く社会と関わっていく時代が今なのではないだろうか。
メディアアートが、コラボレーションを含む実験の場を社会へと拡張している。新旧各メディアの潜在性を探索し、私たちの知覚を問いかけるメディアアートは、生活/仕事、プロ/アマチュア、アート/サイエンスの分岐を越えて日常や都市へとつながりはじめている。
「AMI」(友だち)、という言葉を含むこのプログラムが、いらした方や参加者それぞれがアート、メディア、そしてメディアアートを身近に感じ、生活を創造的で豊かなものにしていただく契機となればと願う。
AMITディレクター
四方幸子